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若者に本来の建築業界の魅力を伝えたい

専門家に聞く

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若者に本来の建築業界の魅力を伝えたい

「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されて以来、新国立競技場など公共建築物を中心に、木造建築物を評価する気運が高まってきました。木造建築は、個人の力量や個性が生かせる仕事です。そんな木造建築を支える技術者・技能者を育成する、ものつくり大学 教授の深井和宏氏に、建築業における技能職の魅力について聞きました。

業界分析

建設技能労働者数の推移と年齢分布の関係資料

建設投資額と建設技能労働者数(建設業)の推移 建設業就業者数・建設技能労働者数建設投資額と建設技能労働者数(建設業)の推移 (建設従事者)の年齢分布(2015 年)
(出典)建設経済研究所「 建設経済レポートNo.71 2019 年 4月」をもとに作成。

専門家プロフィール

ものつくり大学 技能工芸学部建設学科教授 深井和宏(ふかい かずひろ)さん
ものつくり大学 技能工芸学部建設学科教授

深井ふかい 和宏かずひろさん

プロフィール
京都大学工学部建築学科卒業、京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了・同博士課程単位修得退学後、小山職業能力開発短期大学校建築科の助教授に就任。2005年よりものつくり大学建設技能工芸学科教授に就任。専門分野は建築生産、建築経済、木造住宅生産、建築設計監理など。日本の木造建築の設計生産システムを現代化・技術化する研究を生かして、21世紀を担う技術者、技能者の育成を目指している。

もはや「3K」ではない多様な人材が求められる建築業界

建築業界には大工や左官、とび職、内装など多くの職種があり、大企業のゼネコンから小規模な工務店まで、会社の規模も幅広く多様性があります。また、多くが零細企業であることも特色といえるでしょう。建築業界では、そのような特徴に合った人材を育てていく必要があるのです。とはいえ、建築業界を支える多くの小規模工務店では、請け負っている仕事をこなすことが精一杯で、人材育成まで手が回っていません。

日本が抱える少子高齢化問題の影響を受け、建築業界も人手不足になっています。加えて、建築業界は一般的に3K(きつい・危険・汚い)と呼ばれる職業に含まれるようです。しかし、若い人たちは決して建築現場での仕事を避けているわけではありません。建築業界は、給与や休暇などの待遇、社会保険や厚生年金などの福利厚生面も、他の業界と同じようにきちんと整える努力をしています。

ものつくり大学に来る学生たちは、将来の目標をきちんと定め、日々の実習などを通じて生き生きとものづくりを学んでいます。「建築業は苦労もあるけど面白い」と生きがいのある業界ととらえている若者も多いのです。業界全体として、さらにさまざまな環境を整えていくことが求められています。

建築業界の職人さんたちが仕事を続ける理由は、その仕事を面白いと感じているからです。やりがいのある仕事、達成感が得られる仕事であることが若い世代に伝わるように、日頃考えながら指導を続けています。

現場での工夫の蓄積が技術やデザインを進化させる

日本の大手ゼネコンは、日本の伝統的な木造建築を支えてきた、大工棟梁出自の会社が多く、設計施工の最先端技術を持ちます。木造建築が縄文時代から受け継がれてきたのに対し、鉄筋やコンクリートによる建築技術は、日本で本格化してまだ100年ほどしか経っていません。しかし、これまで日本の大学では、日本固有の木造建築の設計や施工の技術はほとんど教えて来ませんでした。町場で徒弟的に優秀な大工が育っていたため、大学で教える必要がなかったのです。技術者が「理論、普遍、分析的、機械」を重視するのに対して、技能者は「経験、個別、総合的、手作業」を重視します。また、技術の世界では「穴を開ける作業」「木を切る作業」「削る作業」など、分業化による効率化が求められます。技能者には「自律的自己管理労働」として、「一連の仕事に取り組める」「仕事の先行きを見る」「人を統率する」「売り上げを管理する」といった臨機応変の対応が求められます。すなわち、「自分の仕事は自分で決められる」、それが技能者の仕事の醍醐味なのです。現場での工夫の蓄積が技術やデザインを進化させてきました。

一人前の技能者になるには、まず実直に基礎を学ぶことが大切です。電動丸鋸や釘打ち機、インパクトドライバーなどを使った作業にばかり頼っていると、仕事の全体像がイメージできなくなります。基礎が身に着いた熟練者ならば、現場での工夫の蓄積が技術やデザインを進化させ、多様な変化に対応できる応用力が身につきます。どの程度基礎が正しく身についているかを確かめるには、技能検定への挑戦なども有効な手段となるでしょう。

世界で活躍する新時代の技能者の育成を目指して

ものつくり大学では「技能五輪全国大会」に出場する学生を支援しています。将来の日本のものづくりを担う若手技能者の技能レベル向上、技能の大切さのアピールなどの目的で開催されるもので、2 年おきに世界各地で開催される「技能五輪国際大会」への派遣選手選考会でもあるのです。

全国大会では、原寸図の正確さ、製作した課題の寸法精度および出来栄えによって作品が評価されます。選手は、与えられた図面から正確に早く作ることを競います。国際大会では、図面を元に自ら寸法や角度などを見つけ出して作品を製作するための、作図による分析能力や臨機応変な応用力が問われます。全国大会、国際大会の出場を通じて、基礎力から応用力を身に付けることができ、日本の伝統建築からヨーロッパ建築の両方の考え方やその文化に触れることができるのです。日本の将来を担う若き技能者にも今後はこういった大会への参加などを通じて海外に目を向け、各国の建築手法などに関する知識も学んでおく必要があると考えています。同時に、海外から日本の建築技術を学びに来る人に対しても、きちんと日本の技能を説明できることも期待されています。

日本の技能者たちは、世界に誇れる素晴らしいものを持っています。それをものづくりの中で生かしていくことで生きがいのある人生を送っていただきたいと願っています。

世界で活躍する新時代の技能者の育成を目指して

※ 所属・役職・年齢・入社年数は取材当時のものです。